10月に、奈良県にある「橿原考古学研究所附属博物館」に展示されている、藤ノ木古墳の出土品を見学してきた。
藤ノ木古墳は、法隆寺の近く、斑鳩町にある円墳で、未盗掘の古墳。
赤く塗られた石棺からは、たくさんの副葬品が出土したことでも有名である。
その中には、装飾見事なクツがあった。
かみつけの里博物館を見学しているとき、藤ノ木古墳から出土したクツと同じようなクツが展示されているのを発見した。
「こんなところに、藤ノ木古墳から出土したようなクツが見られるだなんて!」
私は感動した。
この群馬の地でも、このような見事な装飾がほどこされた履けないクツが、出土していただなんて、と思い、ガラスのショーケースの中に展示されているクツ(複製品だったが)を、ジロジロ長い時間、ずっと見ていた。
群馬県高崎市にある「下芝谷ツ古墳」という、古墳といいつつ積石塚のお墓がある。
そこから「金銅製飾履(こんどうせいしょくり)」という、薄い銅の板に金メッキを施した華麗なクツの片方が見つかった。
下芝谷ツ古墳は、大半が盗掘されていて、破損をうけていた。
が、幸い、遺体の足元にあたるわずかな部分だけ、破損を免れ、遺物が残されていた。
そこに、金銅製飾履の片方が残されていたのだった。
飾履とは、もともと朝鮮半島で発達した、装飾品である。
日本では、5世紀後半から6世紀の時期に、20例ほどした出土していない貴重な遺物で、素材が薄いため、全形をとどめるのは、ほんの数例しかない。
谷ツ古墳の飾履は、国内でもっとも古くかつ、北限の資料である。
藤ノ木古墳のほか、熊本県にある「江田船山古墳」からも飾履が出土している。
かみつけの里博物館には、下芝谷ツ古墳から出土した金銅製飾履を復元した、金ぴかのクツが展示されている。
この金ぴか具合い、わかりますかね?
金ぴかで豪華なクツ。
かみつけの里博物館常設展示解説書には、このクツがどのようにできているか、詳しく解説されている。
それを書いていると、ちょっと長くなってしまうのだけど、クツにポツポツとした青い丸いものが見えている。
私は、この青いポツポツしたものを見たとき、また感動した(復元されたものなんですけどね)
この青いポツポツとした丸いものは「ガラス玉」で、ガラス玉は、銀の座金に収まっており、斜格子状に配置されている。
藤ノ木古墳の馬具にも、金がほどこされたガラス玉が埋め込まれているということを動画で知って、それをナマでこの目で見たときも感動した。
ちなみに、クツの底にもガラス玉が配置されているということは、これをそのまま履いて使っていた、というわけではない。
クツをそのまま履いちゃったら、ガラス玉が割れて、見事な装飾が壊れてしまう。
極薄の地金、底にも散りばめられた装飾品から、このクツは実用品ではないことが明らかで、クツは、宝器として所持していたか、葬儀用の特製品だったということが考えられる。
感動した。
身近に、こんな豪華な副葬品を見ることができるだなんて、勝手に感動していた。
当時の職人の技術のすごさっていうんですかね?
そういうのが間近で見て感じられることが、これまた私自身が感動するポイントなのです。
盗掘にあったといえども、こんな素晴らしい飾履が残っていて、良かったなと思う。
※かみつけの里博物館常設展示解説書から抜粋しました。